正しいことを言い過ぎる人は問題だ!?



都内の某居場所にて。
ある1人の女性利用者の方が、正しいことを言うがため、私は奇妙な思いをしました。
彼女の言うことは実に正しいのです。ゆえに奇妙なのです。

その居場所は、運営の方の趣味もあって、ある飲料が振る舞われています。
それが珈琲なのか、紅茶なのか、緑茶なのか、はたまた中国茶なのか。その点はぼかすことにします。
誰でも1杯、無料で飲むことができ、飲み終わったらカップを自分で洗って帰るルールになっています。

楽しく談笑しながら、美味しく飲む。とても良い時間です。
そして、いつしかカップは空になります。
そこに彼女が来るのです。
「カップを早く洗った方がいいよ。後回しにすると、汚れが落ちにくくなるから。」
確かに、彼女の指摘する通りです。
他方で私はこう感じました。
「談笑している最中に言うの?」
ここは寛容に考え、洗うことより交流することを優先させても良かったように思うのですが。

彼女に対する違和感は、その後、更に大きくなりました。

ある男性が通話を始めました。向こうからかかってきたので取ったものです。
この居場所では、通話をするのなら室内ではなく廊下に出るルールになっています。
しかしながら、男性は室内で通話を始めました。

急にかかってきた通話なので、室内で取って話を始めたのでしょう。
すると例の女性が、やや強い口調で
「電話は廊下でやるの!すぐに廊下に行って!」
と指摘しました。
彼女の言うことは正しいので、男性は即座に廊下に出て行きました。
その様子を見た私は
「あの女性は、もっとソフトに促すことはしないのだろうか?強い感情が見られるな。」
と思ったものです。

さて、ここで飲料を飲み終えた私は、そそくさと洗面台に行ってカップを洗いました。
彼女に言われる事態になるのを避けるために。

さらに追い打ちをかける展開を見ました。
男性陣がスポーツの話で盛り上がり始めたのですが、徐々に熱が入って声が大きくなっていきます。
そこで例の彼女が、激しい感情を伴いながら大声で言ったのです。
「うるさいよ!他にもおしゃべりしている人がいるんだよ!」
男性陣は静まりかえりました。
この瞬間に、私はゾクゾクしたものです。
そしてこう思いました。
「うわぁ、こんなに強く応対するんだ!」

彼女のセンサーにひっかかると、どんな強烈な鞭が飛んでくるのかヒヤヒヤするものです。注意をするのは良いことではありますが、このやり方には仰天せざるを得ないです。

しばらくして、その女性は運営者の方に
「いっぱい注意したから」
と言うと、運営者の方も
「うん、いいよー。どんどん言ってね。」
と肯定的に言っていました。
ここより、私の警戒レベルは最大値に変わりました。
「彼女のセンサーにひっかからないようにしないと!」
という思いで脳が覆われ、もはや、くつろいでジョークを言うだなんて心持ちになれなくなりました。

他方で彼女のことも考えました。
「長女なのかな?だから、家のことを幼い時から手伝ってきたのかな?」
「厳しく育てられたのかな?そして、いつしかその厳しさを自らも内面化させ、自分にも他人にも厳しく接するようになったのかな?」
「完璧主義なのかな?白か黒か思考なのかな?」
もしも、そうであるのなら、彼女も苦しかったことだと思います。

ただ、居場所と言う性質上、気づかいをせずにくつろげることを優先した方が理想だと思います。
もしも、そうではないのなら、ここは修道院のような厳粛な場に感じられ、彼女は厳格なシスターのように見えてなりません。

彼女は正しいことを言う。
でもそれが、度を越して苦しさを生んでいます。